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自筆証書遺言がPCやスマホで作れるようになる!?

遺言書にもデジタル化の動きが加速

 

自筆証書遺言を作る場合、現在の法律では、遺言者自身が全文を手書きしなければなりません。

民法968条1条
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。※下線は筆者

 

手書きは想像以上に時間がかかります。というのも、誤字などの修正方法が厳格に決められていて、かなり面倒なのです。
むしろ初めから書き直したほうが早いということになるのですが、人によっては何度も書き直しを余儀なくされることもあります。
これは自筆証書遺言を作成するうえで、大きなハードルの一つになっています。

そこで、国は数年前から段階的に自筆証書遺言のデジタル化、つまり、手書きでなくともOKにする方向で法制度の改正を進めてきました。

 

すでに第一弾として、遺言書に添付する財産目録についてはPCなどで作成することが認められています(2019年1月13日施行)。

民法968条2項
前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。(以下略) ※下線は筆者

 

そして近い将来、いよいよ本文についてもPCやスマートフォンで作成できるようになりそうです。

 

今月から有識者による検討会がスタート!

 

2023年10月5日には、民間の有識者による「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する検討会」の初会合が開かれ、法務省の担当者も出席しました。
翌日の法務大臣の記者会見では、次のようなやり取りが行われています。

 

【記者】

自筆証書遺言の作成におけるデジタル技術の活用に関してお尋ねします。昨日、民間研究会の初会合が開催されて法務省も参加されたかと存じますけれども、可能な範囲で初会議での議論の内容ですとか、改めて議論に期待することをお聞かせください。

 

【大臣】

まさに昨日、民間の、民事法の研究者、実務家等を構成員とする、法務省からも担当者が入って研究会が立ち上がりました。高齢化社会の中で、相続あるいは相続制度というものは、大変大きな意味を持ち、多くの方が関わり合いを持つ課題になっていまして、その相続制度を支える大きな仕組みが遺言という仕組みでありますので、日本の社会全体に大きな関心事項となり、重要な課題だというふうに思います。

昨日の1回目の研究会では、1回目でありますので検討事項を幅広く皆さんで議論していただくと。それぞれの中身についても議論があったかもしれません。こういうことを検討していこうということについて、大枠の意見交換が行われたものと承知しております。これは、利便性も大事だし、一方で遺言の信頼性も大事だし、煩雑であっても困るけれども、信頼性が揺らいでも困るという、そこの知恵の出し方。端的に言えば価値判断につながるかもしれませんが、そういうところを一回深めていかないとしっかりした答えが導けない問題だと思いますので、関係者の方々が積極的に関わっていただいて議論をしていただきたいと思うし、報道機関の方々にも関心を持っていただければ有り難いと思うので、折々、進捗状況について御報告できるようなことがあれば、心掛けて皆さん方にも途中経過をできる限り報告はしたいというふうに思っております。
※下線は筆者

出典:法務大臣閣議後記者会見の概要/令和5年10月6日(金)

 

もっとも、遺言書は「遺言者の最後の意思表示」ですから、自筆でなくとも本当に本人が書いたものであることが担保されなければなりません。大臣が信頼性について言及しているように、自筆証書遺言のデジタル化にあたっては、他人によるなりすましや改ざんなどを防ぐセキュリティ対策が大きな課題となります。今後、この点について議論が進んでいくものと思われます。

 

諸外国の「遺言書のデジタル化事情」は?

 

ちなみに、諸外国のデジタル化事情はどうなっているのでしょうか?

下の表は、法務省民事局が作成した「遺言制度に関する海外法制」です。ドイツ、フランス、アメリカ、イギリス、韓国、台湾のうち、イギリス以外は、自筆を必須としています。
唯一、イギリスだけは全文を「タイプでもよい」としていますが、その代わり本人が証人2人以上の前で署名し、さらに証人も署名することが義務付けられているようです。

 

出典:法務省民事局「規制改革推進会議デジタル基盤WG提出資料」(令和4年3月)

自筆証書遺言のデジタル化については、2023年度中をめどに新制度の方針が出される見込みです。
引き続き、今後の議論のゆくえに注目していきたいと思います。

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