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6.232023
「難病医療費助成制度」で医療費負担はどのくらい軽減されるのか
難病医療費助成制度について解説します
難病とは、法律で次のように定義されています。
「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」(難病の患者に対する医療等に関する法律 第1条より)
一般に難病と診断されると、継続的な通院の診療費に加え、薬代も高額になるため、生活費に占める医療費の割合が一気に大きくなります。「これがずっと続くのか。経済的に大丈夫かな」と不安になる方も少なくありません。
そこで、2015年に療養生活の質の維持向上を図るために創設されたのが、「難病医療費助成制度」です。一定の要件のもとで、難病治療にかかった医療費が助成されます。
ここでは対象となる難病の種類、具体的な助成の内容について解説します。
助成の対象は388疾病
助成の対象となっているのは、さまざまな難病のうち、国が指定したもの(指定難病といいます)です。指定の基準は、省令で次のように定められています。
- 患者数が人口のおおむね千分の一(0.1%)※
- 診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっている
※実際にはパーキンソン病(140,473人)、潰瘍性大腸炎(138,079人)のように基準を上回っている疾病もあります(2021年現在)。
この制度がスタートした当初、指定難病の種類は制56疾病でしたが、現在では338疾病に拡大しています(2023年4月1日現在)。
東京都は8疾病を独自に認定
東京都では、独自の制度として国の338疾病に含まれない以下の8疾病も医療費助成の対象としています(2023年4月1日現在)。
1. 悪性高血圧
2. 母斑症(指定難病の結節性硬化症、スタージ・ウェーバー症候群及びクリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群を除く。)
3. 古典的特発性好酸球増多症候群
4. びまん性汎細気管支炎
5. 遺伝性QT延長症候群
6. 網膜脈絡膜萎縮症
7. 原発性骨髄線維症
8. 肝内結石症
対象は都内に住所がある方のみとなります。
医療費負担に上限額が設定される
助成を受けるには、お住まいの市区町村に申請をして、認められることが必要です(手続きの方法については、別のブログで詳しく解説します)。
申請が認められると「受給者証」が交付され、次の助成が受けられるようになります。
- これまで医療費の自己負担が3割だった方は、2割に軽減される
- さらに、世帯の所得に応じて自己負担の上限額(月額)が設定され、超えた分は助成される(下の表をご参照ください)
例えば、上限額が10,000円の場合、月の途中でこの金額に達すると、その後、同じ月にかかった医療費は全額助成されます。
なお、対象はあくまでも受給者証に記載された指定難病のみです。他の疾病にかかる医療費は助成されませんのでご注意ください。
◇ 指定難病についての自己負担の上限額(月額)
階層区分 | 区市町村民税による
区分の基準 (夫婦2人世帯の場合の年収の目安) |
自己負担の上限額 | ||
---|---|---|---|---|
一般 | 高額かつ長期(※) | 人工呼吸器等
装着者 |
||
生活保護 | ー | 0 | ||
低所得Ⅰ | 非課税世帯 本人年収: ~80万円 | 2,500円 | 1,000円 | |
低所得Ⅱ |
非課税世帯 本人年収: 80万円超~ | 5,000円 | ||
一般所得Ⅰ | 課税~7.1万円未満
(約160万~370万円) |
10,000円 | 5,000円 | |
一般所得Ⅱ | 7.1万円~25.1万円未満
(約370万~810万円) |
20,000円 | 10,000円 | |
上位所得 | 25.1万円以上
(約810万円~) |
30,000円 | 20,000円 |
※ 階層区分「一般所得Ⅰ」以上の方であって、認定を受けた指定難病の月額医療費について50,000円を超える月が年6回以上ある場合。
出典:難病情報センターホームページ(2023年6月現在)を基に作成
助成の対象となる要件は?
難病医療費助成制度を利用するためには、指定難病にり患している方であって、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- ① 病状が厚生労働大臣の定める程度である方
- ② 指定難病について、医療費総額が33,330円を超えた月が、助成申請をした日の属する月以前の12か月以内に「3か月以上」あった方
例えば、2023年4月10日に申請をした場合、さかのぼって2022年4月30日までの間に、3か月以上、指定難病の医療費総額が33,330円を超えていれば対象となります。
反対に、申請手続き後に医療費総額が33,330円を超えた分は対象となりません。
医療費総のよくある誤解
時どき、「医療費を3万円も払ったことは一度もないから申請できない」と諦めてしまう方がおられます。ですが安心してください。医療費総額とは、自己負担額でなく健康保険を適用する前の「10割の金額」のことです。
医療費総額33,330円の場合の自己負担分は、おおむね次のようになります。
3割負担の方・・・10,000円
2割負担の方・・・6,670円
1割負担の方・・・3,330円
病院の窓口で支払う分だけでなく、処方された薬の代金なども含みます。
難病の治療は持久戦といえます。助成を受けるには審査があり、必ずしも全員が認定されるとは限りませんが、気になる方はぜひ申請を検討してみることをおすすめします。